今、特に学生の子どもがいる親たちは先の見えない不安にさらされていることだろう。
2020年ゴールデンウィークの最中、緊急事態宣言が5月末まで延長されることが発表された。
各地の感染状況によって対応は変わるだろうが、これで全国のほとんどの学校は月末まで休校を延長するはずだ。
それによって休校明けの対応の仕方、または今後の学校そのもののあり方が活発に議論されるようになるだろう。
休校明けには授業日数の遅れを取り戻すべく、土曜授業や夏休みの返上が必要なのだろうか。
それともこれまでの休校期間を新学期までの予習期間と捉え、9月入学を始めればいいのか。
庶民の目線・子どもや親などの立場から、今後の学校とのつきあい方を考えたい。
土曜授業振替のメリット・デメリットの前に
日本全国の学校が今後進む道は主に2つある。
1つは従来の教育どおり学力向上を重視し、長期休校の穴を猛勉強で埋める道。
もう1つは、人間性や創造性を重視した新たな教育スタイルを模索する道だ。
1つ目の道を選ぶのならば、休校明けの土曜授業や夏休みの返上はマストな対策になる。
しかし果たしてそれに学力UPなどのメリットはあるのだろうか。
教育の専門家の中では意見が分かれるだろう。
だがこの話には根本的に無理がある。
2002年、週休5日制のグローバルスタンダードな労働時間に合わせる形で日本でも学校の土曜休校が始まった。
夏休みは昭和の時代から綿々と続いている。
だからこそ、この2つの休息は今の学生たちにとっては当たり前の権利・または前の世代が勝ち取った権利だともいえる。
人は何か大切なものが失われたとき、それがまだ手にしていないものであれば受け入れることができる。
例えば大学受験に失敗すれば、その大学への進学はあきらめられる。
だが、すでに手に入れているものであれば中々許すことはできない。
受かった大学から採点に不備があったため合格の取り消しを通告されたなら多くの学生は相当に腹を立てるだろう。
ただ特別な対策として期間が限定されるのであれば土曜授業や夏休み返上はある程度、受け入れられるのではないか。
しかし、この筋は最初から波乱ぶくみだといえる。
土曜授業のメリットは実感しづらい
休校明けの土曜授業はすでに各自治体が実現に向けて動き出している。
どんなメリットやデメリットがあるのだろう。
メリットは自治体の関連ホームページに記載されているが、その多くは実感しづらいものだ。
基本的に平日の授業負担が軽くなり、全体的により丁寧な授業ができるようになるといったもの。
つまり土曜日に平日授業のサポートをすればより厚い教育が可能になるということだ。
だが、だらだらやるよりも決められた時間内で勉強したほうが能率が上がるのではないか。
メリットとして最も説得力があるのは、仕事休みの親が土曜授業に参加することで子どもの勉強意欲を高めることができるというものだ。
実際、授業参観の日はワケもなくワクワクし勉強に身が入ったという思い出がある人は少なくないだろう。
だが自発的な親の参観ということになると大体、小学生に限られるし、知的な好奇心がある親はそう数多くいるわけではない。
土曜授業のメリットは授業時間の数字上の増加という点以外には中々見出せない。
土曜授業振替の深刻なデメリットは圧倒的に減る休み
土曜授業と夏休み授業には共通するデメリット・不合理な理由がある。
特に子ども時代や思春期の頃は、あそぶ時間が中心にあり、そもそも詰め込み型の教育が不向きだ。
昭和の頃、あれだけ陰湿なイジメや体罰や校内暴力がまんえんしていたのは圧倒的に休みが少なかったからではないか。
21世紀になってそれらの発生件数は激減しているはずである。
いくらパンデミック後でも期限や振替日のない土曜授業や夏休み返上などの強攻策に出れば大問題になるだろう
今は子どもたちがおとなしいからと甘く見ていれば痛い目にあうはずだ。
貧困はどんな善良な子どもをも非行に走らせる。
物があっても忙しくて暇がないという時間の貧困もまた同様だ。
土曜授業と夏休み返上は一時的な処置の範囲を超えれば、日本の教育を大きく後退させるものになるのではないか。
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臨時休校の延期の影響による9月入学案とは?
緊急事態宣言後による臨時休校の延期の影響から学校が取りうるもう1つの道・人間性・創造性を重視した道は現在、国民民主党が提案している『9月入学案』につながっている。
大阪府知事・東京都知事ともに、グローバルスタンダードを理由に9月入学案を歓迎している。
私もそれに同意する。
しかし、そもそもなぜ世界と日本では学校や仕事始めの時期がズレているのだろうか。
一見、冬が終わって活動的になる日本の4月の始まりは自然なことのように思える。
だが、夏・あるいは暖かくなるということに日本と世界では温度差がある。
世界視点・グローバルスタンダードで見れば「暖かくなる=バケーション」。
夏が近づくにつれ遊びの季節がやってくるというわけだ。
そのため世界から見れば、日本の4月始まりは「これから人生のお楽しみがやってくるっていうのに何で勉強や仕事を始めなければならないんだ」ということになる。
日本人にしても「言われて見れば…」と共感する人は少なくないだろう。
勉強や仕事の能率にしても、冬の辛さを耐え忍んだ後より、夏にいっぱい遊んだ後の方が上がるのではないか。
ただ桜とともにある4月始まりは日本に根づいた大切な文化でもある。
ここは慎重な議論が必要だろう。
土曜授業振替や臨時休校の先に向かう日本の学校は?
パンデミックによる土曜授業振替や臨時休校の先の世界で、こどもや親たちは学校とどう向き合えばいいのだろう。
大きな流れで見れば、今後世界はこれまでの過当競争・中国中心のグローバリゼーションを大幅にゆるめてゆくはずだ。
つまり、競争からゆとりのある人生にシフトチェンジしてゆくだろう。
ビジネスの世界で過当競争の領域はレッド・オーシャンと呼ばれ、サメたちが血みどろで争うイメージを想起させる。
一方、オンリーワンで新たなイノベーションを起こす領域はブルー・オーシャンと呼ばれ、何ものもいない自由でオープンな海を意味する。
今後、日本の教育は北欧型のブルー・オーシャンな教育スタイルに変わってゆく可能性が高い。
パンデミックによって、多くの家庭では親が子どもたちと遊んだり勉強したりして過ごす時間の尊さを実感しただろう。
あるいはオンライン授業を通して、子どもたちは自発的に自由に学ぶことの楽しさに目覚めたのではないか。
レッドオーシャンの大波よりもブルーオーシャンのさざ波で揺られていることの心地よさを知った子どもや親たちは、教育の後戻りは望まないだろう。
基礎学力をつけたらほぼ全てが受験勉強に収れんされる現状の教育は、勉学そのもののポテンシャルや楽しさを大いに奪うものに違いない。
学校が苦行の場ではなく自ら行きたいと思える場に変わる転換点は、今目の前に来ているのではないだろうか。
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