新型コロナウィルスによって全国の学校閉鎖・イベントの休業・スポーツの観戦中止など自粛ムードが広がる中、ついにTVの中にも影響が出始めている。
2020年3月8日に放映される『R-1ぐらんぷり』が無観客で行われることが決まったのだ。
R-1といえばピン芸人たちによって一人芸を競う年に一度の大舞台。
『M-1グランプリ』『キングオブコント』と並んで日本一のお笑い芸人の座を争う一大イベントである。
自粛にはもちろん反対派も多いだろう。
だがこれはよく考えればお笑いにとっていいことなのではとも思われる。
無観客の静けさによってピン芸人たちはそのネタの真価が問われることになるのではないか。
それはお笑いがアートの領域に入ることにもつながる。
そもそもコメディに観客の笑いはいるのか。
今回のR-1出場者では誰が有利になるのか。
などなどいろいろと勝手気ままに考えてみたい。
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笑い声が意図的に増幅される昨今のTV業界
無観客開催が決まった『R-1ぐらんぷり』だが、実際はSE・サウンドエフェクトで笑いが加えられることも考えられる。
今の時代、生放送でもスマホと連動して視聴者のリアクションを拾えば、人工的に観客の笑いが作れるだろう。
実際、通常のバラエティー番組にもSEが使われていることは充分に考えられる。
たとえそうだとしても捏造だとして非難されることはないだろう。
TV局に観客を入れていても、ほとんどのバラエティー番組はほぼ若い女性だけに絞っている。
これもまた笑いやすい年頃の女性を使った笑いの捏造だといえる。
普段、私たちが見るTV番組の大半は年々笑い声が意図的に増幅されているのではないだろうか。。
そのため特にお笑い番組では過度な笑い声が逆に芸を殺すことにもなる。
TVの前の視聴者にすれば、おもしろくもないのに笑い声が起こるとやはり不快に感じる。
こういうことを考えれば、無観客の『R-1ぐらんぷり』は逆にお笑い好きな人にとって歓迎すべきことになるのではないか。
芸人のカズレーザーもあるTV番組の中、観客のインパクト受けが関係ない芸で勝負できるので、ネタそのものの価値が問われるいい大会になるのでは、といったことを口にしている。
私もまったく同感だ。
どうかSEをつけず、審査員やスタッフなどの最小限の笑いで放映してほしい。
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お笑いはアートの領域に近づけるのか
お笑いにとって見る人の笑いとは絶対不可欠なものだともいえる。
どんなにすごい芸でも観客の笑いとキャッチボールしあわなければ、爆笑の大波をつくることはできない。
俳優やダンサーも多くの場合、自身のパフォーマンスと相手のリアクションが相互依存している。
一方で1人きりでも成り立つ表現もある。
小説・絵画・彫刻・写真。
こういったアーティストはできるだけ1人でやることがいい表現につながることもある。
歌手でも一流のアーティストであれば無観客でも立派にライブを成立させられるだろう。
お笑いの立ち位置はこの歌手に近い。
だからこそ、今回の無観客の『R-1ぐらんぷり』は、お笑い芸をアートの領域まで拡張させるチャンスにもなりうるといえる。
私はそういう意味でも、今回の開催はできるだけ静かな中で行われて欲しいと願っている。
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優勝する芸人は?無観客ステージで最も有利なのはルシファー吉岡!?
ピン芸には誰か1人ではなく、不特定多数の人々を想定して1人芝居をするというスタイルがある。
それが一番今回の無観客開催に合っていると思われる。
今回の出場者の中では、ルシファー吉岡がその第一人者といえるだろう。
学校の先生役を得意とした彼は、無観客のステージでは水を得た魚のようになる可能性もある。
さらにルシファーは全盛期のスギちゃんのように観客を完無視して話芸を進める芯の強さもある。
ヒューマン中村も注目株だ。
彼お得意のフリップ芸は自分の部屋で1人だけでやっているような孤立感が売りだ。
シュールなネタを手堅い笑いにつなげるセンスもあり、無観客には適した芸人だ。
おいでやす小田も期待大だ。
不特定多数の人をランダムに想定した一人芸を得意としているので、無観客の寂しさはむしろ彼のエネルギー源になるだろう。
ただ、おいでやすは「不動産屋コント」に代表されるようキレ芸を得意としている。
その叫び声は爆笑がなければきつくなりすぎて不快になってしまうリスクもある。
私が他に注目してるのは、メルヘン須長である。
アニメキャラのものまねを得意とした彼女だが、私のツボは沢口靖子だ。
沢口靖子をどうやってか上手く一人芸に落とし込んで欲しいものだ。
スギちゃんにはあった!求められる3つの条件
R1はピン芸ということもあり『M-1グランプリ』『キングオブコント』と較べれば地味である。
視聴率も関東地方ではこの3年連続10パーセント以下に低迷している。
今回の無観客ステージは、逆にこの危機をチャンスに変えるきっかけにもなりうるだろう。
それもこれもやはり第一には芸人たちの力にかかっている。
私が見たところ『R-1ぐらんぷり』はこの何年も他の2大会ほど納得のゆく結果になっていない。
去年の霜降り明星の粗品の優勝などは特に不満の残るものだった。
R-1を代表する存在は今でも「ワイルドだろぉ」で一世を風靡したスギちゃんに違いないが、彼にしても2012年大会では準優勝に終わっている。
私にとって、近年の納得ゆく優勝者は2015年のじゅんいちダビッドソンだけだろう。
決勝で彼が演じたスーパーひまわりの本田圭佑はたぶん一生忘れられないネタである。
無観客開催の2020『R-1ぐらんぷり』は、それほど静かではなかったとしてでも通常開催よりは良い芸が良いものとして正当に評価されるまっとうな大会になるだろう。
観客にショックを与えて勢いに乗るだけの芸は沈み、時間をかけて練りに練ったネタが浮上するに違いない。
独自の確固とした世界観があり、有無を言わさず観る者を引っ張る力をもち、なおかつ勝手気ままなのに大勢から愛される不思議な魅力を持つ人。
私には全盛期のスギちゃんにこのすべてがそろっていたと思えるが、そういう人が今大会でも出てくることを望んでいる。
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