100日後に死ぬワニが炎上した理由と作者きくちゆうきの欲と自信の考察

新型コロナウイルス感染者による死者が世界中で報じられる中、おそらくその誰よりも多くの人に見守られながら一匹のワニが死んだ。

漫画家イラストレーター・きくちゆうき原作『100日後に死ぬワニ』が最終回を迎えたのだ。

 

去年末から作者のツイッターで配信されたこの日めくり4コマ漫画は、死のカウントダウン進行の斬新さや死ぬ運命にあるワニの健気な生き方などが反響を呼び大ブームとなった。

 

3ヶ月あまりの連載中『いいね』が一千万回を超えるほどの人気を博し、最終回の3月20日にどうワニが死ぬのかということは国民的な関心ごととなったといっても過言ではない。

 

がフタを開けてみれば、最終回と同時に発表されたメディアミックスの方が注目を集めネット上で大炎上することになった。

ここからはこの炎上騒ぎを深く掘り下げ、「徳を積む」という点に主題を置いて最終回を考察したい。

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炎上がなければ大多数が受け流していたメディアミックス

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最終回、ワニはヒヨコを助けるために交通事故死したことが暗示されて終わる

 

この話の終わり方自体に大きな不満を持った人はあまりいないだろう。

 

そしてそれと同時に発表されたメディアミックス展開にもほとんどの人は無反応だったはずだ。

いきものがかりとのコラボ動画・書籍化・グッズ販売、そして映画化。

 

さすがに映画化にはビックリした人もいるだろう。

しかし多くの人は「ここまで人気が出たんだなぁ」とぼんやり感心するだけだったのではないか。

 

3ヶ月あまりの連載の中『100日後に死ぬワニ』は日増しに人気を増しマスコミが取り上げるようになった。

 

作者のきくちさんは『行列のできる法律相談所』などの人気TV番組に出演するようになり、最終回の3月20日には朝の情報番組『スッキリ』にも出て大きな特集を組まれていた。

 

大抵の人はそういうブームを知っているのでメディアミックス展開にも違和感を覚えなかったはずだ。

ああ、そういう話が人気と共に出てきたんだなぁ」とぼんやり受け流しただけだろう。

 

だが、炎上に触れると多くの人はその見方はガラリと変えてしまった。

私もその1人だった。

『100日後に死ぬワニ』はステマ漫画なのか!?

100日後に死ぬワニが炎上した理由と作者きくちゆうきの欲と自信の考察2
炎上の大体の言い分は次の2点だ。

100日後に死ぬワニ』は電通などの広告最大手が組織ぐるみで仕掛けた捏造ブームだったということ。

その証拠に、メディアミックス展開が作品の素朴さを汚さないよう最終回の後に初めて発表されたということ。

 

もしこれが事実であればステマ(ステルス・マーケティング)漫画とでもいえるものになる。

つまり作者のきくちさんは、ほぼ無名の漫画家がツイッター上で趣味のように4コマ漫画をアップするという親しみやすいキャラを演じながら、実は大もうけを目論む大企業に買われた職業作家だったということだ。

 

一方でこの炎上仕掛け人は業界人ではないかということも考えられる。

ステマ批判が有名人に対してネット上で極めて有効であること。

そしてメディアミックス展開が最終回の後に初めて公表されたことを知っていることなどがその理由にあげられる。

 

これだけのブームになったので、きくちさんに嫉妬を燃やす業界人は無数にいるはずである。

そういった人たちが結束してこの大炎上を起こした可能性は充分にある。

 

しかし最大のポイントはこの炎上は大きな力を持ったということだ。それはなぜなのだろう。

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炎上の元にある作者の欲と自信の欠如

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炎上が力を持つということは当然、一般の多くの人たちもそれに少なからず共感をしたということだ。

だがそれは『100日後に死ぬワニ』がステマ漫画だったということではない

 

ワニの手作り感あふれる画風からもこの筋を信じる人はほとんどいないだろう。

 

それは作者のきくちさんが最終回という最大の見せ場で作品性よりも金儲けを取ったということだ。

今回の炎上の本質はここにあり、だからこそ大いに燃え上がったといえる。

 

炎上がなければ私もこの点を見逃していたはずであり、表面的には的外れながらこの炎上は有意義なものだったと思える。

 

思えば3ヶ月あまりの連載中、ワニの最大の魅力は清貧という点にあっただろう。

豊かでない中でも清く正しく生きる姿に多くの人は惹かれていたはずだ。

 

だがそのワニが死んだとたん大々的なメディアミックス展開が発表されたとなればやはり作品の世界観が傷つけられる。

もっといえばぶち壊しである。

 

最大の広告戦略とはもちろん最も注目されるときに最大限に広告を行うことだ。

 

きくちさんは最終回に広告を出すことで得られる大金に目がくらんだといわれても仕方がない。

そこには自分の作品にそれほど自信が持てなかったという弱気な心理も読み取れる。

彼には最終回が終わったらすぐに忘れられるのではないかという不安があったのかもしれない。

 

いずれにせよ自分の作品そのものへの敬意と自信があればこの炎上は間違いなく避けられていたはずである。

徳を積むワニが教えてくれること

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100日後に死ぬワニ』を作品として見てゆくと、私はその主題に「徳を積む」ことがあると捉えた。

ワニは夢もお金も彼女もない人生を送る中、何でもない日々を過ごしながらもさりげなく徳を積んでいる

 

電車で高齢者に席をゆずる。

鳥のために巣箱を作る。

空き缶をゴミ箱に入れるなどなど挙げればきりがない。

 

こういった一日一善が、この漫画最大の牽引力であり、好感度の源なのではないだろうか。

 

そしてこの何気ない徳が、ワニとあこがれの先輩をつなぐことにもなる。

日頃ワニは道中で出会う見知らぬ人の赤ちゃんを密かにあやす習慣を持っている。

 

先輩はたまたまそれを見かけてワニのその心優しさに惹かれるのだ。

また彼女とつきあえるようになったのは、ワニの仲間たちの後押しあってのこと。

それもまた彼の普段の徳が成したことだといえる。

 

このように徳を積むことは時に新たな人生を切り開くことにつながる。

有名人の成功秘話にも徳が絡んでいることが多い。

 

ロンドン五輪に出場したバレー選手・迫田さおりは試合中、母の病気で選手登録から外れたメンバーのユニフォームをずっと下につけていた。

迫田は3位決定戦で最も多くのスパイクを決め、日本を銅メダルに導いた。

 

Twiceのミナは友達のプレゼントを百貨店で選んでいる最中にスカウトされた。

とろサーモンの久保田はM-1出場の前に、ホームレスの炊き出しボランティアに参加し、後日みごとにM-1王者になった。

100日後に死ぬワニとコロナウイルスの相乗効果

100日後に死ぬワニが炎上した理由と作者きくちゆうきの欲と自信の考察5
しかしワニの最後はその「徳を積む」ことが仇になった。

連載の3日目、ワニは車にひかれそうになったヒヨコを助ける。

そして100日目に同じことをして今度は自分がひかれて死ぬことになったのだ。

 

徳を積むことも人生の絶対の正解にはなりえない

この漫画は最後にきてこのような深みに達する。

 

実際、徳を積んでも何もいいことが起こらないことだってある。

逆にこの最後のワニのように恩を仇で返されるような事態にもなりうる。

まさに神も仏もあったもんではない。

 

だがきくちさんは最後に「生きる」という言葉と共にワニをサクラ並木の下で復活させている。

これはどんな結果になったとしても、良き行いは輝きを失わないというメッセージなのではないか。

 

もしかすればワニは死後に極楽浄土に行けたのかもしれない。

そんな想像も喚起する素晴らしい終わり方だっただけに、メディアミックス展開は本当に残念だった。

 

ワニが死の運命を知らないまま100日目を迎えたのと同様、作者のきくちさんもまた想定外の大炎上と共に100日目のゴールテープを切ったといえる。

 

そしてこのブームは新型コロナウイルスの猛威と相乗効果を持っていたとも思える。

コロナにより2020年の東京オリンピックも延期される見通しとなった。

いったい誰がそんな事態を予想できただろう。

 

一寸先は闇。

 

この点においてワニと作者とコロナは偶然に一致し、一つの時代を作ったのである。

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