「あのボクシングで終えたくない」
去年末にそう言って現役続行を表明してから4ヶ月、村田諒太がWBAミドル級のチャンピオンベルトを奪った相手、ロブ・ブラント(アメリカ)との再戦を発表した。
会見場所となった都内のホテルには来日したブラントも同席しており、2人がにらみあった姿はその日のほとんどのニュース番組で放映された。
またボロ負けするんじゃないの。
母国で恥の上塗りをするだけだ。
日本でもそういったネガティブな
受け止め方が目立っている。
だが、このリベンジマッチは、サッカーのワールドカップの日本戦なみに注目される一戦になるだろう。
観戦チケットも
争奪戦になることは間違いない。
果たして、
村田には本当に勝ち目はないのだろうか。
それを探ってみたい。
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村田諒太とのリマッチを受け入れた王者ブラントの自信
村田のブラントとのリベンジマッチとも言える一戦は、何よりマッチメイクがすごい。
帝拳かトップランクによるものだろうが、これだけインパクトのある試合を前のタイトルマッチから半年足らずの間によく組めたものだ。
ポイントはチャンピオンのブラントの了承にあるだろう。
格闘技に限らずスポーツにおける勝者とは大抵、やったばかりの相手とはやりたがらない。
負ければ敗北を味わう上に前回の勝利まで奪われてしまうからだ。
そんな二重のリスクを受け入れてまでやるには、主に2つの理由がある。
1ケタ外れのお金をもらえるか、2相当に自信があるかだ。
今回のファイトマネーが
いくらかは発表されていない。
だが、おそらくブラントは第一に自信があるからこそ、このリマッチに応じたに違いない。
「村田が2倍の力を出すなら自分は3倍以上の力をだす。ただ勝つだけじゃなく、お客さんを楽しませて勝たないと世界チャンピオンとは言えない」
ブラントは先の会見で
そんなことを口にした。
そこにはボクサーとしての
誇り高い意地も見える。
村田の地元、大阪という完全アウェーで彼を倒せば、正真正銘、自分がチャンピオンだということを世界中に知らしめることができる。
その思いこそが、ブラントの最大のモチベーションなのではないか。
村田のリベンジ・マッチを受け入れた時点で、彼は真のアスリートだと言えるだろう。
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村田諒太対ロブ・ブラントのカードはワールドカップ級の注目の一戦
村田とブラントの再戦日時は、
2019年7月12日、
場所は大阪のエディオン・アリーナ。
チケット情報は
4月いっぱいまで一切なかった。
熾烈な争奪戦になるので運営会社が発売当日まで黙っている可能性が高い。
ボクシングのチケットは大体、2ヶ月前に発売されるので、ゴールデン・ウィーク明けくらいが狙い目だろう。
取り扱いサイトは、最大手のチケットぴあやローソンチケットなどが考えられる。
料金は基本、5000円から50,000円が相場だが、今回は1~2万は跳ね上がってもおかしくないだろう。
村田諒太は日本を代表する
アスリートの1人である。
そんな彼が人生ラストという覚悟で、再戦に挑もうとしているのだ。
しかも相手は、すでに防衛戦を勝ち、次世代ミドル級のゴロフキンとも呼ばれている無敵のチャンピオンである。
この一戦はボクシングという枠を超え、サッカーのワールドカップのような国民的行事と呼べるほど注目される可能性が高い。
TV視聴率も30パーセント前後までゆくだろう。
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ロンドンまでは挫折続きだった村田の半生
多くの人は
村田は勝ちっぱなしの常勝キャリアを描いてきたというふに見ているのではないか。
確かに2012年、ロンドン五輪で金メダルを取って以降の6年はそうだった。
ミドル級タイトルマッチでエンダムに判定負けしたこともあったが、逆にあの試合は、明らかな誤審によって村田の強さが世界中に知れ渡ることになった。
反省点はあったが世界中から賞賛の声が上がったので、メンタルは崩れなかっただろう。
2018年10月、ブラントに負けるまで村田は6年間ほとんど挫折なく栄光の頂点まで上り詰めた男だった。
そのため、この敗戦は相当にこたえているだろう。
だが、それ以前までの彼のキャリアは挫折続きだった。
荒れていた中学時代、教師からボクシングを薦められるがすぐに退部、大学に進み活躍するが北京五輪に出場できず、引退して大学職員になる。
だが、ボクシング部の学生の不祥事で部全体の活動を止められる。
そこで村田は教え子を励ますために、現役復帰し全日本でチャンピオンになった。
そこから彼の
サクセス・ストーリーは始まったのだ。
彼はロンドンまでずっと
挫折と共に歩み続けてきた。
ブラントに負けたことは
久しぶりに味わった挫折だったろう。
だが、村田にはその精神的な免疫が
充分に備わっているのだ。
試合後の村田の顔ほどにボロ負けではなかった前タイトルマッチ
果たして、
村田には勝ち目があるのだろうか。
前回の試合はボクシングの聖地ラスベガスで行われたため、日本人の多くはニュースのハイライトしか見ていなかったのではないか。
あるいは、敗戦後のみじめに腫れ上がった村田の顔しか覚えていないのではないか。
そのため今回のリマッチを受けて、日本人の多くが無謀だと見ているのだと思える。
確かに、6ラウンド以降はブラントのスピードと手数が目立ち、試合を支配していた。
だが、村田は試合全般を通して前に出るボクシングを続けていて、最終盤にもガンガン強烈なパンチを打ち込んでいた。
一方、ブラントは後ろに下がりながら、村田の打ち終わりを狙ってクイックなパンチを打つという戦法であり、決して正攻法ではなかった。
スタイルとしては村田の方が王者にふさわしいものだった。
判定も、12回1-2(117-110、111-116、112-115)であり、あの顔が物語るほどのボロ負けではなかったのだ。
私はカウンター対策さえしっかりすれば、早いラウンドでの村田のKOもありうると思っている。
もちろんブラントは最強のライバルであり、村田がうまくやっても死闘になる展開もあるだろう。
勝っても負けても
名勝負になって欲しいものだ。
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長男、晴道くんが思い出させたロッキーのエイドリアン
今回のリマッチで、
村田には心に秘めたものがある。
「負けたらやめてもいいから、続けてよ」前回の敗戦後、7歳の息子、晴道くんからそう言われたことを彼は明かした。
まるで映画
『ロッキー2』のエイドリアンである。
王者に負けたロッキーは再戦を望んでいたが、妻のエイドリアンはそれに反対していた。
さらに彼女が病に倒れたため、ロッキーは再戦をあきらめることを告げる。
だが、そこで病床のエイドリアンは彼に向かって言うのだ。「勝って」と。
普通、人は愛する人が
危険に飛び込むことを許さない。
だが、実はそれは愛する人を心配しているからではなく、愛する人を失いたくない自らのエゴから来ているものなのだ。
本当の愛とは、愛する人が本当に望んでいることを、たとえその人が失われたとしてでも後押しするものである。
まさか晴道くんはわずか7歳で、そんな高次の愛の境地にまで達しているのだろうか。
だが、少なくとも父、村田諒太はその息子の言葉から深い愛情を感じたことだろう。
ロッキーはリマッチで
王者アポロ・クリードに勝利した。
村田は果たしてどうなるだろう。
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