16才になったばかりの少年が、テニス界の新たなスターとして注目されている。
終わったばかりの全仏ローラン・ギャロスで、彼は年少の部のジュニア選手としてセミ・ファイナルまで勝ち進んだ日本人選手である。
全仏はテニスの4大大会、グランドスラムの1つであり、グランドスラム・ジュニアでベスト4まで行った日本人は他にいない。
あの錦織圭でもジュニア時代はベスト8止まりだった。
しかも、今回が彼にとって初めてのグランドスラムへの挑戦だったのだ。
その名は、望月慎太郎。
まだほとんどの人が聞いたことのない名前だろう。
20年以上のテニス・ファンである私もまったく知らなかった。
今大会の大活躍によって、望月は早くも“錦織2世”と呼ばれるようになった。
錦織が今年30歳を迎える中、次世代スターを待望する日本人テニスファンは数多くいるだろう。
英語圏では早くして才能を発揮する若者をワンダー・ボーイと呼ぶ。
日本男子テニス界に現れたワンダー・ボーイについて、錦織圭との比較も交えながら詳しく見てゆきたい。
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望月慎太郎は錦織と同じ、アメリカ名門アカデミー出身者
望月慎太郎は、2003年6月2日生まれの16才。
まだ注目されたばかりなので、出身地などの素性はほとんど分かっていない。
なのでキャリアを見て、分かることだけをあげよう。
3才からテニスを始め、12才の年に日本の全国選抜ジュニア大会などでベスト8入り。
タイトルはなかったが日本テニス協会の盛田会長とアメリカIMGアカデミーの担当に見出され、同アカデミーに留学。
それから4年ほどで、グランドスラムのベスト4までたどり着くこととなった。
IMGアカデミーとは錦織も通った世界中の才能が結集するテニス養成学校であり、サンプラスやシャラポワもここ出身だ。
また、今大会の全仏ジュニアでベスト4に上がった選手のうち、望月をふくむ3人の男子選手もここの出身なのだ。
IMGがいかに名門なのかが分かる。
望月の世界ランクはすでに31位であることから、彼がこの2~3年で多くの国際大会でコツコツ結果を出してランキングを上げてきたことが分かる。
決して、ポっと出の選手ではないのだ。
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望月慎太郎から見るイチローやフェデラーが示す“早覚め”の重要性
16才でグランドスラムのセミ・ファイナリストと聞けば、多くの人が早咲きだとか早熟だとかと騒ぐだろう。
しかし、ただ単に早咲きの人であれば、12~13才で必ず行き詰る。
そしてその後、どんなに努力をしてもトップにはずっと遅れを取ることになるだろう。
スポーツの偉大な選手のほとんどは、若くして成功している。
だが、それは早咲きではない。
彼らは人より早く目覚めている、いわば“早覚め”の人たちなのである。
つまり、本気でそのスポーツに取り組んだ年齢が早いということだ。
3才で始めても本気スイッチが入るのが10才であれば意味がない。
そして、たとえ早咲きの才能があったとしても、早覚めの選手ほどの活躍は見込まれないものだ。
つまり、早熟よりも遥かに早覚めの方が重要なのである。
早く目覚めている人の方が当然、積み重ねてきた練習量や試合経験が多くなる。
それこそが才能などよりも大切なスポーツ選手の財産なのだ。
イチローは少年時代から「プロ野球選手を目指すんだ」と言って、友達のお父さんたちに冷やかされながら少年野球の練習後も1人で素振りをしていたという。
テニスのロジャー・フェデラーは、日本のテニス少年たちへの助言として、小さいときから年長の人とプレーしなさいと言ったことがある。
それも、若くして向上心おうせいな早覚めの人の特徴だ。
早覚めの人は、人よりも多くの練習や場数をふんでいる。
その経験豊富さは、才能や努力よりも価値がある。
スポーツの世界では成人後にトップ選手よりも経験値を増やすことは、とても難しい。
そのため偉大な選手の多くが早く目覚め、子どもの頃から良い経験を積んでいるのだ。
16才で開花した望月慎太郎も、ほぼまちがいなく早覚めの1人だろう。
今後、彼が活躍すれば、いずれ錦織圭のように「世界一のテニス選手になりたい」みたいな文が書かれた小学生時代の寄せ書きがTVで紹介されることだろう。
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10年繰り返されてきた錦織の負けパターン
今大会の全仏では、錦織圭が試合前のヒッティング・パートナーとして望月を選んだ。
錦織は自身も10代のときに、全仏の決勝戦を控えたナダルからパートナー指名されている。
彼は、それが大きな励みになったので、望月にも同じ気分を味合わせてやりたいと思ったのだそうだ。
その錦織とナダルは今大会、ベスト8で当たった。
結果はナダルの圧勝。
錦織はそれ以前までに苦戦続きでスタミナを失っており、ほとんど試合にさえなっていなかった。
途中で棄権しなかっただけ、まだマシだ。
そして、これはこの10年近く繰り返されてきた錦織の敗退パターンでもある。
望月慎太郎の活躍に日本のマスコミが注目したのは、錦織に対する失望感の表れでもあるだろう。
率直に言って、錦織圭が今後、グランドスラムを制覇する可能性はほぼゼロに等しい。
2014年のUSオープンの決勝進出が、最初で最後の優勝チャンスだったのだ。
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望月よ、とにかく背を伸ばせ!
望月がどこまでやれるのかは未知数だ。
私もまだ彼のプレーを見たことがないが、パワーよりも戦術を生かす知的なプレイヤーだという。
成功すれば、ストロング・スタイルの男子テニス界において新風を巻き起こすことになるだろう。
だが、望月に最も求めたいのは、身長である。
男子テニス界において、おそらく6フィート(約182センチ)以下の選手がグランドスラムを獲ったことは、この20~30年はないはずである。
それくらい現代テニスにおいては体力が必要になる。
16才で175センチなので、あと2年で願わくば10センチ伸ばして欲しいものだ。
望月にはこの2年、世界ランクを上げることなどよりも、いい食事をしてよく寝ることを一番に心がけてほしい。
どれほどテニスのセンスがあり、どれほど精神力があり、どれほど戦略を立てても、体力がなければ先に進めない。
このテニス界の現実は、錦織圭のここ10年でいやというほど味あわされてきた。
錦織は松岡修造の身長を超えずして、松岡のキャリアを超えることができた。
だが、望月が錦織を超えるには、まずは背を追い越さねばならない。
なぜなら、錦織を超えるということは、ナダルやジョコビッチのようにグランドスラムを獲ることを意味することだからだ。
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