半沢直樹が来春、2020東京五輪イヤーに帰ってくる!
このニュースを見て、オリンピックが東京に決まったときのように明るい希望を持てた人もいるのではないだろうか。
『半沢直樹』とは――説明するまでもないが、最終話の視聴率が42.2パーセントを記録した特大ヒットドラマのことである。
これは半世紀に渡る民放ドラマ史の中でも歴代3位に当たるものであり、さらにTVドラマの視聴率が全盛期の半分に落ちた近年に生まれたものだった。
数字が全てではないが、影響力という点で、半沢はTV史上に残る怪物ドラマだったと言える。
そこでここでは、4つの原作を軸にして、これまでの半沢のおさらいと、来春の新ドラマの展望、さらに掘り下げた解釈や、なぜ7年後に復活なのかということについても書いてみたい。
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ロスジェネの逆襲でもただの銀行員、半沢直樹
半沢直樹は、作家、池井戸潤によるトリロジー(4連作)の原作をベースにしている。
2013年に制作されたドラマの前作は『オレたちバブル入行組』『オレたち花のバブル組』の2作をドラマ用に脚色したものであり、2020年の次回作は『ロスジェネの逆襲』『銀翼のイカロス』の続く2作を元にして作られる予定だ。
「倍返しだ!」の決めゼリフがあまりにも有名な半沢だが、別にプロレスラーでもロックスターでもない。
ただの銀行員である。
武器はマネー、特技は交渉、勝利のサインは栄転である。
しかし、戦う相手がメガバンクや大企業という巨大組織なのだ。
いくらアントニオ猪木でもメガバンクの頭取相手にコブラツイストをかけることは出来ない。
まず、面会することも許されないだろう。
だが、半沢なら土下座させることも出来るのだ。
前回のドラマのベースになった原作2作では、半沢は勝利と敗北を2回繰り返す。
勝ち、負け、勝ち、負けだ。
40パーセントを記録した前回の最終話、半沢が出向という名の負けで終わったのに驚かされたことを覚えている人はまだ数多くいることだろう。
次回作の『半沢直樹』も原作通りであれば、勝ち負けが前後する山あり谷あり展開になるだろう。
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原作2作が予感させる半沢続編の再ブーム
前回のドラマの大ヒットを受け、放送終了後に『ロスジェネの逆襲』はミリオンセラーを記録したそうなので、すでに次回作の筋を知っている人も多いだろう。
金融庁や自身の属するメガバンクを敵に回したことで、半沢は子会社である証券会社に左遷させられる。
さらに、彼はそこでも元メガバンク行員ならではのスパイ行為を働いたと濡れ衣を着せられる。
が、そこで彼はピンチにある会社とタッグを組んで、元いたメガバンクに戦いを挑む。
巨大組織の内部にいながら外圧をかけて打ち崩す。
TVに7年ぶりに登場する半沢は、またもそんな爽快なドラマを見せてくれそうだ。
続く『銀翼のイカロス』では、「今度の敵は政治家だ」のキャッチコピーが目を引く。
再びメガバンクの幹部に栄転した半沢は、航空会社の再生を託される。
が、その会社は500億円もの負債の帳消しを大臣から認可されるほど政界や財界から愛されており、半沢はその闇に切り込むことになる。
と、あらすじ書きをしているだけで「次回作の最終話も視聴率40超え、いけんじゃね」と思えるほど魅力がある。
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半沢ブームと集団左遷の失墜の要因
2013年の前作では、なぜあそこまでの半沢ブームが起きたのだろう。
そこには第一に時代の後押しがあったはずだ。
ときは、民主党政権がたった3年で倒れたあとで、安倍政権がスタートしたばかりの頃だった。
リベラルな日本人は、改革がダメになったばかりだったので、皆んな意気消沈していたことだろう。
私もそんな1人だった。
そこに半沢直樹が現れた。
彼はリベラルのロールモデルだった。
「悪いやつは悪い、やられたら倍返しだ」
その勇姿に、多くの人たちは魅了されたのだ。
どんな大問題を起こしても責任を取らない上層部、どんなに身を削ってでも忖度し続ける部下たち。
半沢はそんな病んだ現代社会にに、理想主義と熱い魂で戦いを挑んだ。
驚異的な視聴率は、リベラルだけでなく政治的に中道な人たちでさえ魅了されたことを示している。
一方で、現在、半沢枠と言えるTBSの日曜劇場で放送されている『集団左遷』が、視聴率1ケタ台の苦境に陥っている。
私は以前、ここで半沢と集団左遷の片岡を較べて、そうなることをある程度、予見していた。
福山雅治演じる片岡も同じ銀行員だが、保身と改革の間で揺れ動いているようなキャラである。
集団左遷の失墜は、そういう昭和型のサラリーマンヒーローは、もう必要とされていないことを物語っている。
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現実の国政に左右されない半沢直樹の普遍的な価値
2020年も、半沢は多くの日本人から大歓迎されるだろう。
この夏、衆参同時選挙があると言われ、日本国政の大きな岐路が近づいている。
だが、半沢はその結果に左右されないはずである。
2020年、自民党政権が延命されていたとしても、半沢は改革ヒーローとして崇められるだろう。
また、野党の連立政権が出来ていたとしても、半沢は時代の波に乗れる。
何しろ『銀翼のイカロス』で描かれる政権は10年前の民主党がモデルであり、その民衆迎合のポピュリズムぶりが揶揄(やゆ)されていたのだ。
『半沢直樹』のスタッフは、もしかすれば2020年の政権交代を予見して、半沢を送りこむのかもしれない。
これは深読みにすぎないが、自民党の長期政権を見込んで、7年もの間、半沢の続編を封印していたとも考えられる。
2020年が野党の連立政権の年になったとしても、半沢直樹と政治家の対立は大いに盛り上がるだろう。
半沢は政治的に右でも左でも中道でもない。
ただ、彼は「倍返しだ」の合言葉と共に、悪いことをした者に相応の罰を与え、そして善人に相応の幸福をもたらしたいだけだ。
だが、今、日本ではそんな当たり前のことが、ほとんどの場合、成されていない。
半沢の登場が待ち遠しい。
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