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翔んで埼玉のディスり大歓迎の心理!映画とは違う原作の掘り下げ解説

翔んで埼玉のディスり大歓迎の心理!映画とは違う原作の掘り下げ解説
映画『翔んで埼玉』が現在、

大ヒット上映中だ。

 

封切りからたった3日間で、

興行収入3億円、

観客動員数24万人越えだという。

 

大体、総興行収入が30億円を超えると

邦画の年間売り上げランク・トップ10入りになる。

 

このままゆくと、

そこにも食い込めるような勢いである。

 

「埼玉県の皆様、映画化してごめんなさい」

 

これが映画のキャッチコピーの1つだ。

 

その通り、内容は埼玉県民をバカにする、

いわゆる埼玉ディス映画になっている。

 

だが、皮肉にも日本全国で、

その埼玉県人こそが最大のお客さんになっている。

 

封切りから3日間で、

人口1千万人を超える東京よりも、

埼玉の方が多くの興行収入を上げているのだ。

 

一体なぜ、埼玉県人はこの映画に

怒るどころか、大歓迎の姿勢を見せたのだろうか。

 

その心理は一体何なのか?

 

一方で、

翔んで埼玉』には原作マンガがあり

 

それはたった3回の連載ながら、

途方もない奥深さを持っている。

 

連載から35年以上たっても、

リバイバルされるに足る内容なのだ。

 

ここから、

そういったことについて書いてゆきたい。

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翔んで埼玉はかなりトンガった原作マンガ

翔んで埼玉のディスり大歓迎の心理!映画とは違う原作の掘り下げ解説2
『翔んで埼玉』の原作マンガは、

1982年、魔夜峰央(まやみねお)

によって描かれたものだ。

 

この名前より『パタリロ』の作者

だといった方が早いだろう。

 

 

マンガなど一度も読んだことがない

という人でも、パタリロという響きには

どこか聞き覚えがあるのではないか。

 

それもそのハズ、『パタリロ』は

1978年から30年以上がたった現在でも

続いている超老舗マンガなのである。

 

 

翔んで埼玉』はその合間、

魔夜氏が出身地の新潟県から埼玉県に

引っ越したばかりの時に描かれたものだという。

 

連載がたった3話で終わったのは、

単に魔夜氏がすぐに他県に引っ越したからだそうだ。

 

2015年ごろ『翔んで埼玉』は

SNSで話題になったことからコミックスが復刊

 

さらに人気に火がついて

今回の映画化にいたる。

 

 

翔んで埼玉』は基本、

オルタナティブSF、

もう1つのありえたかもしれない

仮想現実を描いている。

 

このジャンルの多くは、

実際にある現実社会を風刺する内容になり、

本作もその1つと言える。

 

東京、埼玉、千葉、神奈川といった

関東エリアが厳密に差別化された世界が

舞台になっている。

 

東京人は他県の人と交わることが

許されず、そのため他県の人は東京に

住むことも許されない。

 

中でも強烈な風刺は、

サイタマラリヤの存在である。

 

設定では春日部蚊が媒介とあるので、

埼玉県、春日部市発祥の蚊が運ぶ病気なのだろう。

 

刺されれば致命傷になる。

 

実際、ヒロインの白鵬堂百美も刺されて、

ひん死の状態になる。

 

これはかなりパンチの効いたジョークであり

 

春日部住民がコブシを突き上げて

マンガの不買運動を始めてもおかしくはない

ディスればディスるほど埼玉県人は喜ぶ!?

翔んで埼玉のディスり大歓迎の心理!映画とは違う原作の掘り下げ解説3

(ディスりに対するリアクションも至高)

 

映画でも数々の埼玉ディスりがありながら、

埼玉県人の多くは好意的だ。

 

公開3日間中のツイッターを統計調査すると、

カワイイ、オモシロいといった

ポジティブ系のワードが90%を超えたという。

 

では、埼玉県人はイジられ好きのドMなのか。

あるいは悪口や非難に対して寛大なのか。

 

私はどちらも違っていると思う。

 

なぜなら、

埼玉の比較対象が東京だからである。

 

東京とは言うまでもなく、

日本では1つだけ飛びぬけた

大都市エリアであり、

 

世界でもNYやパリと同じレベルで

語られる場所である。

 

なので、

東京と比較対象になるだけで

名誉なこととなる。

 

例えば、

あなたと同じサッカーチームに

本田圭佑がいたとする。

 

そして監督が、

何かにつけて本田と比較して

あれが足りないこれが足りないと言ってきたとする。

 

そこで、あなたは嫌な気がするだろうか。

たぶん、そうはならないだろう。

 

むしろ本田と較べられるだけ

光栄なことだと思うのではないだろうか。

 

 

埼玉県人もそれとよく似ている。

 

彼らは東京から劣等感を与えられることで、

実はその他すべての都道府県への

優越感を得ているのではないか。

 

ドMどころか、

とんだナルシストなのではないか。

 

そう考えると、

埼玉県人が寛大だという見方もひっくり返る。

 

相手が東京だからこそ、

その非難を受け入れられるのである。

 

実際、映画の『翔んで埼玉』では、

特に千葉県人とのガチ争いが

大きなお笑いネタになっている。

 

真の寛大さとは、

目上にいる者以外からの非難を受け流して

初めて表れるものだ。

 

要するに、東京比較の埼玉ディスりとは、

埼玉県人のプライドなのではないか。

 

ディスればディスるほど、

埼玉県人の鼻はピノキオのように高くなっていく。

 

翔んで埼玉』の県内盛り上がり

根底もそこにあるのではないだろうか。

 

そして、埼玉ディスりが盛り上がるほど、

東京都民の鼻もピノキオのように伸びてゆく

 

ただでさえ、東京一極集中の弊害が

日本全国に出ている時代。

 

そういう意味では、

映画の大ヒットは時代に

逆行する危うさも秘めている

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翔んで埼玉の原作解説:差別のデフォルメで暴きだす現実の闇

翔んで埼玉のディスり大歓迎の心理!映画とは違う原作の掘り下げ解説4
映画版の構成がおもしろい。

 

原作マンガの筋

伝説の過去と位置づけ、

 

映画版オリジナルの現在との

二重構造にしているのだ。

 

現在において表面上は

差別がなくなっているが、

実際には過去と変わらない

出生地差別が存在する。

 

なので、過去が人の本音、

今が人の建前という見方もでき、

そのギャップも笑いを誘うだろう。

 

原作の設定では差別がよりトガっている。

 

他県人を排するために

東京には関所が設けられている。

 

つまり国策として

堂々と差別を行っているのだ。

 

また東京では、

他県人が命に関わる病気でも

治療が受けられなくなっている。

 

ここまで来ると

世界基準の風刺コメディとも言え、

日本人以外にもウケそうだ。

 

また、

新潟県人が「名誉都民」との設定には、

作者、魔夜の政治的な姿勢も感じられる

 

それは総理大臣が新潟県出身なので、

新潟県人が東京人と同じ扱いを受けるというものだ。

 

 

昔、南アフリカ共和国ではアパルトヘイト

と呼ばれる人種隔離政策が実施されていた。

 

白人以外の人種は、

市民権が大きく制限されていて、

まさに『翔んで埼玉』の

人種差別バージョンの世界だった。

 

だが、南アには出張派遣された

日本人が数多くいて、

同国の経済発展に大きく貢献していた。

 

そこで南ア政府は、

日本人を「名誉白人」として

差別対象から外したのだ。

 

それは差別というものが、

実は人ではなく一握りの政治家の都合

生まれているというのを表している。

 

翔んで埼玉」でも、

麻実麗や白鵬堂百美が

差別撤廃のために戦う最たる敵は、

階階堂進という名の政治家である。

 

人種と出生地差別とは、

数ある差別の中でも最も根源的なものだ。

翔んで埼玉』では、

それが思いっきり

デフォルメされて描かれている。

 

極端な社会風刺やディスりとは、

大きな笑いを生む。

 

と、同時に世の中が隠している

現実の闇や人間の本音を暴き出して、

私たちの前に問題提起もする。

 

 

映画『翔んで埼玉』を劇場で観て、

ただ笑って帰ってゆくのもいい。

 

だが、きっとあなたの心には

何かしら重たいものも残るだろう。

 

それは一体何なのだろうか。

 

それを探ってゆけば、

この映画はいっそうあなたの中で

輝きを増すものになるのではないだろうか。

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