仮面ライダーといえば、多くの人が子ども向け番組だと思うだろう。
しかし仮面ライダー出身の俳優たちが数多くブレークしていることも多くの人が知る事実だ。
中にはオダギリジョーを始めとして、現在の日本の映画・ドラマ界を引っ張ってゆくほどの名優もふくまれている。
そんな主演俳優のレベルアップに伴って、仮面ライダーの筋やテーマも上がっているようだ。
TV朝日系列で9月1日から始まる仮面ライダーの新シリーズ『仮面ライダーゼロワン』は単なる子ども向けの戦隊アクションではない。
制作発表では、AIの進化に関わる大人で骨太なテーマが盛り込まれていることが明らかにされた。
AIが人間の職業を奪うといった身近な所から、AIが人知を超える飽和点・シンギュラリティの時代にどう生きるのかということまで幅広くカバーしているようだ。
仮面ライダーにまったく興味がない人をも振り向かせられるよう、その魅力を紹介したい。
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仮面ライダーゼロワンは原点回帰と共にある刷新!
仮面ライダーゼロワンについて、制作サイドは令和初の作品であることから「令和ライダー」の愛称も用いている。
そこには昭和や平成のライダーから抜け出そうとする刷新の意欲が感じられる。
ゼロワンのコスチュームにもそれが表れている。
黒と黄色を貴重にしたスーツで、一見するとアマゾンの熱帯雨林にいそうな猛毒を持つ昆虫のようだ。
仮面ライダーの原作者・石ノ森章太郎のオールド・ファン層たちにとって、それは石ノ森の別の作品『キカイダー』のコスチュームに似ているのだそうだ。
そのためライダーの原点回帰だとして歓迎されている。
ゼロワンというのは、新しい01でもありながら原点回帰の01でもあるということだろう。
温故知新に則った新しいライダーであれば、より多くのファンを生み出せるはずだ。
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名優のタマゴと共に進化していったライダー・シリーズ
仮面ライダー出身俳優が豪華になっていった最初のキッカケは、やはりオダギリジョーだろう。
何しろ、彼は仮面ライダーに主演してから数年後にはカンヌ映画祭のレッドカーペットを歩いていたのだ。
そんなことがあれば、性格俳優を目指す志の高い新人たちも仮面ライダーに抵抗を示さなくなるだろう。
オダギリジョーの後、菅田将暉、そして竹内涼真もライダーのバトンを受け渡した。
現在、彼らは共に日本アカデミー賞の最優秀賞を取るまでの名優に成長した。
そのため今、オダギリのような俳優になりたい若手は自ら率先して仮面ライダーのオーディションに行くようになっているだろう。
仮面ライダーはいつしか実力派俳優の登竜門になっているのだ。
令和ライダーの高橋文哉も数年後には大化しているのかもしれない。
オダギリはよく仮面ライダーの撮影中に物語やセリフに関して注文をしていたと語っている。
ライダーのクオリティはそうやって才気溢れる若手俳優のアドバイスと共に上がっていったのだろう。
一方でオモシロいのが、女優の方はあまりパっとしないことだ。
一覧を見るとほとんどが小池里奈や内田理央のようなグラドルである。
戦隊ものなので女優はセクシー系ということなんだろう。
が、今回は井桁弘恵演じる刃唯阿(やいば・ゆあ)はシリーズ初回から登場する初の女性ライダーになるということなので、ただものではない。
過去作品では途中から参加するライダーとしては前例があるが、初回から登場するのも新しい。
ライダーの世界もどんどん男女平等になっているようだ。
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仮面ライダーゼロワンの本当の敵はAIではない?
仮面ライダーゼロワンのストーリーは大人にも訴えるものがある。
というか子どもたちを置き去りにしてないかと心配にもなる。
ライダーの飛電或人(ひでんあると)は、祖父から引き継ぐ形でAIロボットの制作会社「飛電インテリジェンス」の若手社長になる。
なので社長ライダーとも呼ばれているが、家業ビジネスか…と昭和を感じてしまうところもある。
ライダーゼロワンはAIロボット・ヒューマギアと戦うことになる。
とくれば人間対AIの使い古されたパターンかと誰もが思うだろう。
しかし、このヒューマギアは、AI絶滅をもくろむテロリスト「滅亡迅雷.net」によってハッキングされた、いわば人造AIロボットだ。
なのでライダーが打倒するのは、AIではなくAIを悪用する人間なのだ。ここにテーマの成熟がある。
大人になって見ても輝いて見える仮面ライダーへ
発明家、レイ・カーツワイルは2030年までにはAIが人知を超えた特異点・シンギュラリティに到達すると予言している。
そうなれば、今ある世界中の職業の3分の2はAIに奪われてしまうとの国際研究機関の発表もある。
つまり、今を生きる子どもたちにとってAIとは未来の自分の職業を奪う悪者なのだ。
それなのになぜ令和ライダーはAIの進歩を促す側についているのか。
制作サイドはその点についてこのように説明している。
悪いのは職業を奪うAIではなく、AIの登場で全てをあきらめてしまう人間の方だ。
これは今からの時代を生きるすべての大人に聞かせたい言葉だ。
AIがシンギュラリティを迎えて世の中のジョブが激減しても、人間にはまだまだやるべきことがある。
なぜならAIがどんなに進化してもできないことがあるはずだからだ。
今後の人類の進化のカギは、それを懸命に探ってゆくことにあるだろう。
AIを悪用したりAIを排除したりする人たちこそ、未来をつぶす元凶なのである。
AIの進化は必然であり、人類はその共存の道を探らねばならない。
仮面ライダーゼロワンのストーリーには、そんな深みがある。
AIをテーマにしたことで、何と国立情報学研究所(NII)が仮面ライダーの監修を担うことも話題になっている。
このテーマは多様性を重視するリベラルな考え方でもあり、さすがはTV朝日系列だといえる。
現在、放映中のNHKの朝ドラ『なつぞら』では、アニメの過渡期を迎えている。
そこである脚本家がこんなことをいう。
「私は子どものときに好きだったアニメが、大人になっても変わらず好きなままでいられるような、そんなアニメを作りたいんです」
令和の新時代を迎えた今、仮面ライダーもこの成熟の域に達しようとしている。
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