逃亡犯条例とは?香港のデモが中国に与える政治的影響を詳しく解説!

香港のデモの主催者は、2019年6月16日、日曜日のデモ参加者が200万人に達したと発表した。

それが事実なら、香港市民の約4分の1に当たる人たちが、デモをしたことになる。

 

TVニュースのおびただしい群集映像を見ると、その驚異的な数字にも納得がゆく。

 

デモのきっかけは、香港政府トップ林鄭月娥(りんてい・げつが)行政長官が、逃亡犯条例の改正を打ち出したことだった。

これは香港の犯罪容疑者を無条件で中国に引き渡すための改正法案である。

もしこれが通れば、中国当局は香港においても政府に批判的な市民を弾圧することができるようになる。

 

ただでさえ近年、香港の中国化はエスカレートしている。

数日前、デモの拡大を見て、長官は改正の無期限延期を決めたが、撤回を求める市民はなお炎上することになった。

そして日曜日、200万人規模のデモに発展したのだ。

 

さて、中国はどうするのだろう。

5年前の雨傘運動のように、また香港のデモを強制排除しにかかるのか。

だが、そこには天安門事件から30周年という節目や、近々開催される大阪G20サミットが立ちはだかるだろう。

そして、何よりもグローバリゼーションの甘い蜜を失いかけていることが大きく関わってくる。

 

今回の香港デモを探り、今後、中国の民主化が進むのかどうかを考えてみたい。

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天安門事件の頃の中国と今との違い

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1997年香港はイギリスから独立して以来、中国との一国二制度の元にある

そのため香港は中国からのある程度の独立が認められている

だが、2014年、反中国デモとなった雨傘運動以来、年々中国の締め付けが厳しくなっていた。

 

一方、雨傘運動が失敗したことで、香港市民はあきらめと共に中国の横暴を黙認し続けてきた。

今回の大規模デモは、そのたまりにたまったフラストレーションが爆発して起きたものだと言える。

 

本来なら、中国は軍事力で強引にデモを封じ込める

だが、今それは難しい。

今月、天安門事件からちょうど30年が過ぎ、日本もふくむ世界中のメディアがこの歴史的な惨劇を改めて大々的に報じた。

1989年に起きた天安門事件は、ソ連のペレストロイカに触発された民主化運動だった。

それに対し、中国は圧倒的な軍事力で市民を無差別攻撃して一気に沈静化させた。

犠牲者は一万人以上と見られている。

 

今、香港デモに直面した中国は、世界中から厳しい視線を浴びている。

天安門事件30周年ニュースによって、世界は中国に改めて悪いイメージをもつようになったのだ。

そんな中、中国は12日、治安部隊によって学生デモの参加者80人を負傷させた。

 

これには当然、世界中のメディアが反応し、中国に一気に非難の矢が向けられた。

中国は今、明らかに行き詰っているだろう。

天安門事件の頃と中国の共産党体制は本質的に何も変わっていない

だが、1つ、大きな点が異なっている。

それは今の中国が、グローバリゼーションの甘い蜜を吸い、そしてそれを失いかけようとしていることだ。

グローバリゼーションとの葛藤に行き詰る中国

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G20サミットが近々、大阪で開催される

。G20は現在、世界で最も大きな各国トップによる国際会議だと言える。

そこでの最たる議題は経済であり、世界全体のグローバリゼーションの舵取りが成される。

 

香港のデモは、そんなG20サミットの直前に起こったのだ。

そのため、中国としては香港デモを従来のように軍事力で一気に解決すれば、G20で相当の経済的なダメージを受けることになる。

 

万一、天安門事件のような大虐殺が起これば、中国と商取引のあるアメリカ、EU、日本などは一気に手を引くことは間違いない。

ただでさえ、中国は今、アメリカと貿易戦争の真っ只中にあり、ファーウェイを始めとした中国企業が苦境に陥っている。

 

天安門から30年、中国はほとんど何も変わっていない

 

だが、グローバリゼーションによる目覚しい発展で、中国の生活水準は大きく変わった。

そして、中国が世界中と商取引することで、中国を取り巻く世界が変わってしまったのだ。

そこで、中国では政治的な変化も避けられなくなる

つまり、民主国家、または法治国家であるフリをせざるを得なくなったのだ。

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プーさんは甘い蜜を取る

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香港の200万人デモに対し、もし今中国がいわゆる天安門対応を取れば、世界から一気に孤立する

30年前の天安門の頃は、経済的にも世界との結びつきは薄かったので、孤立など全然構わなかった。

ミサイル実験で世界中から非難を浴びても涼しい顔をする、今の北朝鮮と同じだ。

 

だが、今の中国はグローバリゼーションの成功で、世界中から莫大なモノと富が集まる経済大国になっている。

その贅沢、その繁栄を捨ててまで、中国は一党独裁を貫き、香港デモを強制排除するのだろうか

 

5年前、同じ香港で雨傘運動と呼ばれる大規模デモが起こった。

香港の選挙制度を中国化することへの反対運動だったが、中国は軍事力で一気に押さえ込んだ。

今回の香港デモでも、これ以上、激化すれば中国は同じ過ちを繰り返すかも知れない。

 

だが、経済が絶好調だった5年前と今とでは状況がまったく違う

元々停滞期に入っていた中国経済はトランプとの貿易戦争でさらに減退。

さらに、世界最大の経済会議G20が目前であることや、天安門事件から30周年に当たることがのしかかる。

 

中国は今、グローバリゼーションの甘い蜜を失いかけているのだ。

くまのプーさんに似ているとも言われる習近平は、はたして甘い蜜を取るのか、共産主義を取るのか。

答えは明らかだろう。

当面は、何としても民主主義国家のフリをし続けるしかないだろう。

成果を上げた実行力のあるデモ

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香港のデモは、中国の民主化、あるいは世界平和のためにも大きな原動力になりうる。

逃亡犯条例改正の撤廃によってデモが成功すれば、それは明らかに中国本土にも影響を与えるだろう。

中国人たちも民主化の声を上げ始め、政府は甘い蜜との駆け引きに四苦八苦することになるだろう。

 

一度、美味しい思いをしたものは、人でも国でもその蜜を必死に守ろうとする。

数年前、海洋進出を広げて軍事独裁化を図る中国を見て、世界中の識者がグローバリゼーションで中国を民主化するやり方は間違っていたと口にした。

だが、まだその答えは出ていないのだ。

 

一方で、この香港デモの盛り上がりは、一日本人としてうらやましくもある。

日本でも2010年代に反原発デモや反安保法案デモで、大いに盛り上がった。

だが、政府の政策は1ミリも変わらなかった。

なぜなら、そこには実質的な圧力がなかったからだ。

 

平和的なだけのデモでは限界があるのだ。

今回の香港のデモ、また長期化するフランスのイエローベスト運動では、市民デモが国会や市民生活までストップさせるような実行力を発揮した。

結果、政府は政策を大きく変えたのだ。

 

横暴な政府に対しては、目には目を歯には歯をではないのか。

この現実を日本のリベラルはどう受け止めるのか。

今回の香港のデモは、アジアにおける民主的なデモのあり方にも大きな影響を与えるだろう。

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