2020東京オリンピックを控える中、2017年頃から東京の警視庁を始めとした全国の警察が採用試験の年齢制限をかなり緩めるようになった。
これまでは30歳未満だったものが、大抵の都道府県で大幅に引き上げられたのだ。
警視庁では一気に35歳未満まで引き上げられ、今後は特定部署に限らず身長などの体格基準も全面撤廃してゆくという。
背景にはもちろん人手不足、成り手不足という今後の日本経済の最たる問題がある。
警察官を始めとした公務員の人権問題や、公務員天国・日本の汚点まで絡めて掘り下げてゆきたい。
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警視庁の採用者数激減が示す警察官の危機
2018年度の調査を見れば、ほとんどの都道府県で警察官の採用年齢制限が緩められているのが分かる。
最高齢は兵庫県の36歳、35歳は秋田・山形・神奈川・岐阜・東京といったところだ。
このデータから、人口減少が著しい地方と警官の数が人口割合で低くなってゆく都市部で警官が足りなくなっていることが読み取れる。
年齢制限以外にも採用条件の緩和が進んでいる。
従来は男性は160センチ、女性は150センチ以上といった体格基準があったが、それが全国的に部署を超えて撤廃される見通しだ
サイバー犯罪などに当たる頭脳派が属する「特別捜査官」においては体格基準が問われないのはもちろん、警視庁では年齢制限が何と60歳まで引き上げられるという。
警視庁の採用試験の受験者数は、2012年には2万人を超えていたが17年には約5,000人減少している。それを考えれば、ここまで徹底的な採用条件の緩和が起こるのもうなずける。
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警察官のなり手が不足している事実とその原因は?
警察官の成り手不足の最たる原因は少子高齢化だといわれている。
だが、それ以外にも大きな要因は多々ある。
中でも最も大きいのは過労・オーバーワークだ。
実際、警察の内部では警官には休みがないという暗黙の了解が行き渡っているという。
SNSなどには、勤務交替の巡りあわせが悪かったら月に休日が1日しかないといった現職の声がよく上がっている。
これは完全な異常事態だ。
最近ではこういうことが一般にも知れ渡っているため、警官の成り手が少なくなっているのだ。
警察とは国家公認のブラック企業とさえいえる。
これは公務員全般にもいえる。
森友学園問題で近畿財務局の職員が自殺したが、それも財務省から強いられた証拠改ざんのための激務に追われてのことだった。
霞ヶ関のキャリア官僚もまた、休みなどないという暗黙の了解の元、ほとんど狂気の中で仕事に向かっているのだ。
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国の富が公務員と体制管理にばかり回る悪循環
学校の先生もまた部活の激務などでその地獄の勤務実体が日々ニュースで報じられている。
だが、ほとんどの一般人はこういうニュースに胸を痛めない。
なぜなら教師や警官や官僚などは、その分、多くの給料をもらい手厚い福利厚生も得られているからだ。
公務員の多くも、この点で妥協してオーバーワークを受け入れているのだろう。
だが、大げさに言えば、ここに1つの国を滅亡させる悪循環がある。
国にとって公務員とは国を守るための戦士ともいえる。
公務員を増やし、その仕事も増やせば、それだけ国は管理体制を強められる。
結果、国、実質的にはそのトップにいる政治家が安泰できるのだ。
だが公務員を働かせすぎると、成り手が減る。
そこで国は給料を増やすなど多くの税金を投入して彼らを引き止めるのだ。
それによって国のお金である税金が公務員にばかり回って、文化や産業の発展が置き去りにされる。
結果、国家体制が強められる反面、その実体はどんどん貧しくなってゆくのだ。
それが公務員天国といわれる今の日本の実体だ。
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公務員でも国家に歯向かえる素晴らしきアメリカ
マイケル・ムーア監督の映画『華氏119』の中、全米の教師たちがデモを起こした実在のニュースが取り上げられている。
アメリカの先生たちは、近々全教師が強制的に加入させられる高額な健康保険を拒絶するため教職をボイコットし、大勢の生徒たちもそれに続いた。
結果、彼らは国を相手にして見事に保険の撤廃を勝ち取ったのだ。
映画ではそれがとても感動的に描かれていて、見ているだけで気分爽快になれる。
だが、これは日本ではほぼ絶対に起こりえない。
教師や警官などの公務員は労働組合のような団体で国に訴えることそのものが禁止されているからだ。
実行すれば違法行為としてすぐに摘発されるだろう。
基本、公務員には労働基準法が適用されておらず、それが公務員のブラック職務の温床になっている。
警察官の成り手不足を本当に解消したいのであれば、ここにメスを入れねばならない。
公務員の側でもそのために自身の給料を下げるような身を切る覚悟が必要になる。
公務員の減少が示す日本の明るい未来
公務員に労働者の基本的人権がない中では、いくら給料や福利があっても人手不足は解消できないだろう。
これからの時代の若者は、お金よりも生き方を重視するようになっているのだ。
また公務員の仕事自体に魅力がなくなっているのも、成り手不足の減少につながっている。
AIの進化に伴って、公務員は消滅する可能性が最も高い職種の1つだ。
多くの若者もそれが分かっているだろう。
かつて警察官は小学生の人気職業の1つだったが、今ではユーチューバーなどに取って替わられている。
このように、警官の成り手不足には多くの深刻な要因がある。
年齢制限の緩和などの小手先の改革では全く解消できないほど根深い問題なのだ。
警察官だけではなく、公務員は全体として今後も日本からどんどん数少なくなってゆくだろう。
そしてそれはもちろん国家滅亡のサインなどではない。
それは国の持つありあまる富が、人々のため有効に使われだしたことを示す嬉しい知らせなのだ。
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